CANONのカメラを愛用していてもこのレンズの存在を知らない方は多いのではないでしょうか。
CANON EF200mm F1.8L USM
現行のレンズでは存在しない焦点距離200mmで開放F値1.8というスペックの単焦点レンズを紹介してみたいと思います。
CANON EF200mm F1.8L USM
CANON EF200mm F1.8L USMを知らない人も多いと思うのでまずはレンズの概要を少し紹介します。
単焦点や大三元ズームレンズで200mm F2.8クラスのレンズは手にしたことがある方は多いでしょう。ぜひご自身のレンズと比べてみてください。
EF200mm F1.8L USMについて
CANON EF200mm F1.8L USM
- 発売年月日:1988年11月
- 発売時価格:456,000円
- レンズ構成:10群、12枚
- 絞り羽根枚数:8
- 最小絞り:22
- 最短撮影距離:2.5m
- 最短撮影倍率:0.09倍
- フィルター径:48mm
- 最大径×長さ:130mm×208mm
- 質量:3,000g
2021年になって製造中止が噂されているEF200mm F2L IS USMの1世代前のレンズがこのレンズです。私のレンズは1993年製造の約30年前のものとなります。
蛍石レンズや手振れ補正機構がなかったためか値段はEF200mm F2L IS USMのおよそ半額でした。しかし、重さはEF200mm F2L IS USMより500gも重い3,000g。
屈折率を高めるために鉛を使用しており、それがレンズを"とても"重くしています。そして現在製造されるレンズには鉛が使うことができなくなったため、同じようなレンズは作れないと言われています。
焦点距離200mmのレンズなのに他の望遠単焦点レンズと同様にフォーカスプリセット機能が搭載されています。CANONのミラーレス一眼で使用する際はこのフォーカスプリセット機能は使用できないようです。EOS Rの説明書に記載があります。
レンズ本体が大きいだけあって、レンズフードもとても大きく迫力があります。他の望遠の単焦点レンズ同様にフード先端はゴム状のカバーが付いており、フードを下にして地面に置いてもしっかり安定します。
キャリングケースは発売時期によって新旧あるようです。私が所有しているケースは旧型のシンプルなデザインのものです。
EF200mm F1.8L USMを入手するには
もちろん生産は終了しており、サポートも終了しているレンズです。
発売当時で45万円と高額なレンズでしたので出回っている数量も少なかったようです。現在、中古市場では可動品で25万円から30万円程度で出回っているのがほとんどのようですが、もともとプロの方が使用していたレンズが多いためか、鏡筒まで綺麗なものは珍しいようです。
私はリサイクルショップで購入しました。今までカメラ店でこのレンズが並んでいるのを見たことは2度しかありません。それだけ珍しいものなのでしょう。
同じ光学設計でNew FD200mm F1.8Lというレンズも存在します。オートフォーカスのカメラが出回った頃に発売されたレンズで、中古市場ではほとんど出回ることはないようです。被写界深度が浅いこのレンズをマニュアルフォーカスで扱うのはとても大変だと思います。
CANON EF50mm F1.8 STM とのボケの大きさの比較
EF50mm F1.8 STMとは
通称;撒き餌レンズ。CANONの一眼カメラを持っている人なら1度は所有したことがあるのではないでしょうか。
1世代前のEF50mm F1.8Ⅱは実売価格10,000円以下でしたが、現行のEF50mm F1.8 STMは実売価格16,000円程度するものとなりました。しかし、マウント部分に金属部品を使用したり、STMを採用することでより静かなオートフォーカスとなりました。また、フルタイムマニュアルフォーカス機構を搭載しているため、操作性も向上しています。
今回はこの撒き餌レンズを使用してボケの比較を行いたいと思います。
ボケの大きさの比較の条件
使用するカメラはSONY α7Ⅲです。SIGMAのマウントアダプターMC-11を使用して検証します。EF200mm F1.8L USMとの使用でオートフォーカスがたまに迷うことがありますが、日中の落ち着いたポートレート程度であれば使用できると思います。
このEF200mm F1.8L USMとα7Ⅲとの相性は今後検証したいと思います。
写真に被写体の大きさがおおよそ同じになるように撮影します。
開放F値が同じ1.8なので設定は同じ条件で撮影できます。
ボケの大きさの比較の結果
今回紹介する一番ボケる!?レンズEF200mm F1.8L USMと撒き餌レンズ50mm F1.8 STMの比較です。もちろんF1.8で撮影しています。
まずは写真からご覧ください。
こちらはEF50mm F1.8 STMで撮影したものです。
とても安いのに綺麗なボケです。
そしてこちらがEF200mm F1.8L USMで撮影したものです。
被写体からの背景へのボケ量が明らかに違いますね。 圧縮効果もあり、身近な草花も特別な存在に見えて来ます。
焦点距離によって撮影できる範囲が違うので分かりやすい配置になるように撮影しました。
今後も条件を変えて検証していきます。
レンズのスペックによるボケ量の比較
さて、できるだけ背景をボカして写真を撮るためにはどのようにすればいいでしょうか???
ポイントは4つです。
- F値を開放で撮影する。
- 望遠レンズで撮影する。
- 被写体に近づいて撮影する。
- 被写体と背景の距離を遠ざける。
ボケの計算などは色々な方が紹介しているので今回は省略しますが、焦点距離が50mmと200mmで同じF値のレンズを使用すると理論的には4倍ボケることになります。もちろんレンズの特性や撮影条件などでこれに当てはまらないこともあります。
そして他のレンズと比較してもこのEF200mm F1.8L USMはボケは大きいと言えます。
※焦点距離50mmの場合の被写体までの距離を1.25mとして算出しました。背景との距離は無限遠としました。例)焦点距離200mmの場合は距離4倍の5mになります。
※レンズの特性や撮影環境により異なることがあります。
作例紹介
最後にEF200mm F1.8L USMを使用した作例を紹介します。今回は青森県内の桜を中心に撮影した作例です。もちろん全て絞りF1.8で撮影したものになります。
桜のトンネルを津軽鉄道が通る姿が有名な青森県五所川原市の芦野公園です。朝日が差し込む前の静かな駅のホームを撮影しました。ピントを合わせた駅のホームから撮影場所までの滑らかなボケが他のレンズにはない美しさだと思います。
芦野公園駅側からの写真です。朝日が差し込み、その中を始発電車が向かってくる様子を撮影しました。 桜の花の前ボケも綺麗です。
電車が出発した後に芦野公園に咲いている桜を撮影しました。背景ボケも柔らかく、いい表現をしてくれると思います。朝日の明暗もきちんと捉えてくれます。ボケすぎることもあるので背景との距離は注意が必要です。
夜にも芦野公園を訪れて手持ちで撮影しました。開放F値が1.8なので手持ちでもシャッタースピードをカバーできます。ピント面はとてもシャープに、前後のボケは違和感なく綺麗なボケになっています。α7Ⅲのセンサーとの相性も良いようです。
暗いところでもピントが迷わないか検証してみました。ピントはセンターの桜に合わせました。CANONカメラまでとはいきませんが問題ないスピードで、精度もバッチリでした。
場所は変わって青森県板柳町の河川公園です。桜の名所として雑誌にも取り上げられることが多い場所なのでご存知の方も多いと思います。
ピントはベンチに合わせました。手前から奥までなだらかなボケが印象的だと思います。風で散った花びらもきちんと捉えています。
青森県の岩木山の麓にある桜林公園です。桜の下でキャンプができるスポットとしても有名です。撮影した日の天気は雨でした。簡単なトンネル構図ですが、絞り値F1.8で撮影することで他のレンズで撮影した写真とは少し違った表現も可能です。
まとめ
古い光学設計のレンズではありますが、現行のレンズにも負けない描写性能ではないでしょうか。エクステンダーを使用することで300mm F2.8や400mm F4クラスのレンズの代わりにもなります。今回の作例のようにSONYのカメラでの使用も可能です。
オートフォーカスは最新レンズのオートフォーカスのスピードには程遠いですがポートレートでは大活躍間違いなしですし、風景写真での使用も可能です。
冒頭で述べた通りにとても希少なレンズです。少し高価なレンズですが、美品を見かけたら購入してもいいのではないでしょうか。
ミラーレス一眼が主流となって、今までにないようなスペックのレンズが多く発表されています。EF200mm F1.8L USMのようなスペックのレンズが登場する日も近いかもしれません。
今後もこの素晴らしいレンズについては条件を変えて作例を紹介していきたいと思います。
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